私が見た世界

第7回 現代の中国のエリート学生から見た日本

政策研究大学院大学
小松正之
2014年1月16日

北京大学と北京大国語大学で優秀な学生に教える
 中国には台湾に都合5回程、大連、旅順と203高地、上海と蘇州そして舟山諸島に行った。そして、2011年から3か年、北京大学国際関係大学院大学と北京外国語大学の日本学研究センターで特別講義をしている。農水産業、放射能汚染とリーダーシップ論を教える。
 北京大学では毎年20名の国際関係と日本に関係する分野を専攻する博士課程の学生と、また、北京外国語大学では社会学と日本語を専攻する学生に講義する。北京大学の学生は英語については全員ができるが、日本語はあまり得意ではない。北京外国語大学の学生は、日本語を専攻しているので、学生は日本が流暢である。学部の時代かそれ以前から日本語を学習しているからだ。中には、日本人とほとんど間違えるほどの流暢な学生もいる。女学生で若い。本当にびっくりするが、訊くと数年しか日本語を勉強していないという。
 双方の学生とも、日本について熱心に良く勉強する。いまの中国はシステムと歴史、人のものの考え方が、アメリカより日本に近く日本の制度や文化を学んだ方がそれを中国の社会や制度に生かすことができると考えている。もっとも、私の教える学生は最初から日本に関心がある人である。


学生は現代の日本に学びたい
 彼らの関心事項は@環境政策と対応である。日本も高度成長期には環境の汚染が著しかった。それを克服した日本から、その制度や住民の意思決定法を学びたい。中国経済も発展が急だが、そのひずみを若い世代は感じている。また、地方の住民も環境施設が自分の身近に建設されることを嫌がり反対がとても強い、日本の住民の理解の得方にも学びたい。A金融政策では、日本は、リーマンショックでもあまり被害を受けなったがその回避策、また、多額の銀行が多額の不良負債を抱え、倒産の危機を迎えた際にも政府が介入して、当産する銀行を最小限に抑えた。その政策を学びたい。中国も貸し出しの規模や貸出先の事業に問題が今後出て来よう。日本から対策を学んでおきたい。B中国の一人っ子政策は大幅に緩和されたが、急速に高齢化社会が到来する。その先端を行っているのが現在の日本の高齢化社会である。日本が実験的先進例をして多くの解決策やヒントを提供してくれよう。Cそのほかにも手塚治虫の鉄腕アトムの研究をしている学生もいる。


日本の印象は好感
 日本をよく観察している。まず日本の町並みや道が大変にきれいであること。時間に正確であること。商店やレストランのサービスが非常に行き届いていることが感動的とのことだ。中国では、お客がいても店員は無視して、自分たちの話に夢中である。これには中国人も辟易している。最近、日本のしゃぶしゃぶレストランの給仕女性のきめ細やかなサービスに倣い四川省の事業家が北京を中心に「海底撈」というしゃぶしゃぶレストランを開業した。そこでは、女性が、肉や野菜をお湯に浸し、それを皿に盛り付けるサービスや起こりのスープにうどんを入れる際に踊りを披露する。大人気で予約が取れない。中国人もサービスに飢えている。


「半沢直樹」が大人気
 昨年12月に訪問した際、学生から出た話題はテレビドラマ「半沢直樹」であった。これは中国でも一大関心で、倍返しが人気だ。このテレビドラマのようなことは実際に日本であると思いますかとの質問を受けた。わたしは銀行などで不正・癒着を働く側は今でもいる。しかし、主人公の半沢直樹のような正義感に燃える人物は相当少ないのではないかと答えた。そして、ドラマの結末である「半沢直樹」が結局、自分の正義の戦いが評価されずに子会社に出向させられたことに彼らは落胆していた。
 これでは、正しいことをしよう、公正な社会に役立ちたいと思う人が出ないのではないかとの危惧を中国人である彼らも思ったのではと推測したのである。


北京の海底撈で北京外国語大学の教え子の学生たちと食事
北京の海底撈で北京外国語大学の教え子の学生たちと食事


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