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太平洋を取り巻く国々と私

第5回 グレートバリア・リーフの保護

アジア成長研究所
客員主席研究員 小松正之
2014年10月30日
日本の90%にあたる広大なサンゴ礁

2012年1月オーストラリアのクイーンズランド州沖に広がるグレートバリア・リーフ(大保礁)を訪ねた。日本の国土面積の90%に相当する34.4平方キロを有する広大な海域である。これは南北2300キロに及び3000の保礁からなり、世界のサンゴ礁の約10%を占める。大保礁は観光、船舶での輸送、防衛、漁業、原住民の伝統的利用と科学研究と多種の目的で利用される。しかしながら、広大な珊瑚礁の海域を保護するため鉱物資源と石油採掘は禁止である。


保護を目的する海洋公園法

石油の採掘に反対する住民が立ち上がり、1975年にグレートバリア・リーフ海洋公園法が成立した。環境省職員(女性)と国会議員(女性)も積極的に支援したことが鍵であった。

1983年から海域別に保護、利用の度合いを明確にして4つの海域に分けるゾーニングの作業を開始した。しかし採捕の禁止が十分でないとして政府は再度ゾーニングの再設定を開始した。

2002〜3年にゾーニングの政府原案を作成。公表した上で説明・意見交換会を1000回以上開催した。そして11月にゾーニング計画を完成した。

2007年には海洋公園法を改正し、五年ごとに計画の策定を義務付けた。このようにして、住民の参加で、科学データを客観的に収集しながら、大保礁を守る努力を続けている。


リーゾト地ハミルトン島

この島は大保礁の中でも唯一ジェット機が離着陸する。リソート地として、家族連れや新婚旅行に人気があり大型ホテルとコテージがある。ホテルのルームキーで他のホテルやレストランなど島内の全ての施設が利用可能である。誠に便利である。島の沿岸部ではグラスボートで珊瑚礁の観察が、またホテル前の浅い海のカラマタン湾(写真1)は、遠浅の湾で、歩いてサンゴ礁の観察ができる。色彩が、鮮やかではない礁石サンゴで黄色、緑色や白色である。多くのサンゴの白化現象が進んでいる。

この島に一人で2泊した私は、島から出発の日、ブリスベーンを経由してグレートバリアリーフ海洋公園研究所があるタウンズビルに向かう。搭乗口で、私は乗換便の分と2枚の搭乗チケットを出したところ、切符のチェック係の男性職員から、あなたの奥さんはどこだと話しかけられた。苦笑いだった。


大保礁の研究所

タウンズビルにあるグレートバリア・リーフ海洋公園研究所は大保礁を保護するための各種の調査・研究を行っている。大保礁の劣化・サンゴ死滅の原因は陸からの汚染物資や富栄養化物質、窒素、リン酸や有機化合物の流入で、これらがどのくらいかを毎年調査している。重大な流入物はクイーンズランド州の産業であるサトウキビの化学肥料、殺虫剤や畜産からの糞尿などの有機化合物である。これらの汚染物質や栄養塩を研究所は過去100年近くにわたってモニターし最近30年程度のデータは特に充実している。それらのデータを活用し、研究所はゾーニングへの反映、人間活動の禁止区域の設定、農業での化学肥料量の大幅に削減も勧告する。また、森林の栄養や都市の生活排水の流入量もモニターして、適切な勧告の科学的ベースになっている。


わが国の取り組み

これに比べ、わが国の研究と対応は遅れている。例えば、森と川と海に関係は経験則で科学的な観点は入っていない。体系的、時系列のデータの蓄積のための調査体制の確立もない。都市の汚染物質、農業活動からの栄養塩と土壌の流出調査もなされていない。山に木を植えれば海が豊かになると考えている。これには、科学的な裏付けが必要である。グレートバリア・リーフでの研究はたくさんの内容がある。

長年のデータの蓄積と科学的評価に基づいた地道な対策が重要で効果を発揮する。日本に気の遠くなる、長年にわたるデータの収集活動と蓄積が一刻も早く必要だ。


グレートバリア・リーフ内のハミルトン島のカラマタン湾

(写真1 グレートバリア・リーフ内のハミルトン島のカラマタン湾;
海面下で黒く見えるのが珊瑚礁 2012年1月 筆者撮影)


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