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日本人とは何か

第95回 最後の清流四万十川の幻想

一般社団法人生態系総合研究所
代表理事 小松正之
2021年10月28日

四万十川とは

3月には視察と聞き取り、8月に四万十川の科学調査も実施して多くのことが分かった。11月にも再訪問する。

四万十川は、東津野村の不入山(1,336メートル)に源流を発し流程は196キロメートルで南下し、また東から西に蛇行してさらに南下する。(図1)かつては天然の魚類や甲殻類も豊富な自然が豊かな河川であった。アユやウナギ、川えびとゴリが豊富で、青のりとアオサノリ(養殖他)も多く獲れた。付近は森林で覆われ、林業と農業が盛んであった。また、江戸時代から後川や中筋川などの河川が氾濫し、旧中村市などが何度も水害に見舞われた。このために河岸工事やダムの建設が盛んに行われた。


最後の清流四万十川の現実

1980年代には、我が国最後の清流として一躍脚光を浴びた。1983年に「NHK特集 土佐・四万十川~清流と魚と人~」で「最後の清流」として放送されてから、観光客の訪問が著しくなった。しかし、マイカーなどで訪れる観光客が落とすごみの増加や観光地の整備などに対応できない問題が生じた。



図1)四万十川の流域図 資料;高知県ホームページ


一方で、四万十川の観光地としての人気の上昇と観光の増大や農業や開発・振興による環境の劣化への対応を求められて、高知県は、橋本大二郎知事のイニシアチブで「高知県四万十川の保全及び流域の振興に関する基本条例」(略称:四万十川条例)を2001年(平成13年)に制定した。


四万十川の環境と水質の悪化

しかしながら、四万十川流域の漁業者、住民やNGOなどによれば、2000年頃から急激に四万十川の水質と環境の悪化がみられ、魚類や手長えびなどの甲殻類並びに青のり・アオサノリの生産量が減少した。その結果、現在のアユやウナギの漁業生産量はピーク時の100分の1程度となり、アオサノリの養殖生産量は30トンが昨年は4トンで、2021年はわずか1.2トンに減少した。四万十川の下流域の竹島川の右岸の国営農場からの排水、過肥料と農薬の竹島川への流入が原因か?天然の青のりはゼロとなってから久しい。

四万十川は、たびたび水害に襲われ、その水害の防止のために河川工事を行い、その結果、河川流域の自然の湿地帯の喪失、蛇行河川の直進化や河岸の三面張りの拡張など、自然の生態系と生産力を喪失した。

また、農業廃水が四万十川に流入することが、環境悪化の大きな原因の一つであるとの見方が、下流域漁業協同組合、四万十川漁業協同組合連合会並びに四万十町にあるNGOなどからも表明された。


農業の農薬と土木工事と都市下水

また、生姜は根茎腐敗病に弱く、臭化メチルが使用禁止となり、クロルピクリンの使用が主流で、これは劇薬農薬として近年タイでも使用禁止となり、日本からの農産物の輸出が禁止されかねない。日本は世界から見れば、農薬の規制が甘い。四万十川の流域の生姜農業でもクロルピクリンが流出し四万十川に入り込んでいると推測される。

高知県は日本最大のショウガ産地で収穫量は21,400トンと全国の43%を占め作付面積も445haと県内最大である。

旧中村市内から、四万十川の左岸を流れる後川に注ぎ、四万十川に合流する地点での汚染が高い。かつては旧中村市内は悪臭が漂った。

中筋川と後川は江戸時代前半から家老野中兼山による治水事業が行われてきた。江戸時代には中村全村が流出したことがしばしば見られた。1988年(平成元年)には中筋川のダム工事が着工し、1998年(平成10年)には中筋川ダムが完成している。

治水工事が多数行われてきたが、四万十川の水質は悪化する。


自然を守る日本人が海と河川を悪化

日本人は自然を守る文化を有する世界に類まれなる民族といわれた。放射能汚染された福島第1原発汚染水は太平洋に放出する予定である。翻って河川を見ると、河川の環境悪化は、宮城県石巻市の北上川河口域の土木工事と静岡県の富士川での砂利採集と工場排水の現場でもみられる。河川と海は本当に日本人が招いた震災問題を抱える。



四万十町大正地区の芽吹手沈下橋
農薬が原因とみられコケも水草も生えず川の小石がぬるぬるする。 8月1日筆者撮影


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