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日本人とは何か

第48回 人類はいつまで生き延びるか

東京財団政策研究所
上席研究員
小松正之
2018年8月23日

地球環境の異変

地球環境の異変が日本中と世界中の大気と陸地と海洋に多く発生しているが、いつまで日本人と人類はこの地球上で存在できるのであろうか。

気象庁の発表では、100年間で日本の気温と日本近海の表面水温も1度以上上昇した。

北アメリカ西海岸からアラスカ沿岸にかけて2013〜2016年に広範囲に暖水塊が発生した。これを科学者はブロッブ(Blob)と呼ぶ。アラスカに今まで見られなかった針葉樹(スプルース)が生えだした。(写真)

ところで、気象庁や気候変動パネルが提供する気温の上昇の値とは、真実を表現しているのだろうか。この夏の日本と世界の異常高温を見るにつけ、4〜5度も上昇しているように思える。そして、住みにくい。

人間は、地球を人間の活動がもたらした排泄物のゴミ捨て場としか思っていないように見える。

大気中には、石油や他の燃料を消費し二酸化炭素を排出している。大気圏のスペースが広大であると楽観し錯覚しているのか、その排出が止まらない。特に、発展途上国と中国はその排出を止めようとしない。これからもまだ伸びる。したがって、大気中の二酸化炭素の排出は、今後も増大する。温暖化はさらに進む。

二酸化炭素は、太陽から降り注ぐ赤外線を吸収する。

温暖化の原因の76%は二酸化炭素といわれてきたが、現在では、地球のオゾン層を破壊した代わりの代替フロンが問題といわれる。冷蔵庫冷媒他の多数の目的に、この代替フロンが多量に使用されている。代替フロンの赤外線吸収が問題であるとされる。


海洋温暖化と酸性化

問題は大気だけではない。二酸化炭素は海水中の水と結びついて、海洋の酸性化を招いている。この海洋酸性化がサンゴ礁の白化現象を引き起こし、死滅の原因とも言われている。豪州のグレートバリア・リーフでは2017年までに80%のサンゴ礁が死滅してしまった。(豪環境省)

日本の沿岸も防災のため、堤防を作り、河川を直行させて、大水を瞬時に海洋に流し出す仕組みに変えてしまった。河川水の量と質によって、沿岸域の湿地帯、磯、藻場や干潟が出来上がり、そこに無数のバクテリアとプランクトン、微小生物がいて魚類や貝類あるいは海藻類が生息し繁茂する。大震災の後、大堤防を、環境評価も実施せずに建設した。これは米国では考えれないとハインズ・スミソニアン環境調査研究所長が指摘した。


経済成長と自然破壊

経済成長と自然の破壊との関係に相関があるのではないか。経済発展で排気ガスは出すし、森や草地は工場や住宅やあるいは太陽光発電パネルの設置場所の敷地となる。海岸は埋め立てられて、沿岸域の生物の多様性は減少する。大規模農業も耕作機械で農地を荒らし、肥料や除草・除虫材を使う。トロール漁船で海底を荒らし、海面養殖も海を汚す。


水や空気はかけ替えのない地球の生産物

森林を伐採し、そこに生息する動植物と微生物並びにコケ類などの生き物を破壊すると、どうやって二酸化炭素を吸収し、酸素を作りだすのか。

雨が降り、これが地下の水脈を通り、飲料が可能な水になるには、清浄な地層が必要である。人間はただで空気や水が提供されると考えるが、地球が数十憶年をかけて作り上げてきた地球環境・生態系の中でこそ可能である。飲み水も水源の山を壊し、汚染物資を森林や河川に投棄し水循環を汚染させれば、天の恵みも一瞬にして失われる。

海洋についてもいえる。海岸線の破壊で、栄養分も少なく、生態系が破壊されたところには、再生産に必要な栄養と環境も得られない。また、有害な鞭毛藻が発生し魚類などの海洋生物資源の生産も激減し、質も低下する。

「人類の世紀」は、人類が地球生態系の統治者として君臨する時代を意味する言葉であろうが、人間は酸素がなければ10分も生きられない。飲み水がなければ数日しか生存できない。食料もそうだ。人間は生物多様性と生態系の一部である。それによって生かされている。そのことを忘れて、自然を自分の意のままに活用しようする。そして、現在は高温不快な夏の気候に苦しんでいる。



コジアック島で温暖化でみられるようになった針葉樹スプルース(もみの木)2018年6月著者撮影


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