地震保険を語る

(第九回)地震保険の実務的な要点

 今回は、地震保険がどのような内容の保険であるか、実務的に記してみよう。ただし、保険のパンフレットではないので、詳細ではなく要点だけに留める。
 地震保険は、火災保険とともに付けるが、どうしても加入したくない場合は、その意思を捺印することによって示し加入しないことができる。保険を付ける対象は、住宅(併用住宅を含む)と家財である。東日本大震災で多くの自動車が津波の被害にあったが、自動車は地震保険の対象にはならない。自動車保険の方で用意する地震・噴火・津波の特約に加入することになる。
 保険金額(補償額)は、火災保険の保険金額の30%から50%の範囲で決めることになっているが、50%にすることが多い。ただし、上限があり、住宅は5千万円、家財は1千万円までとなる。
 地震による典型的な損害は揺れによる住宅と家財の損壊であるが、地震保険では、地震による火災に加え、噴火、津波による損害も対象になる。逆に、火災保険では、火災が被害の直接の原因であっても、地震による火災、噴火、津波は対象にならない。また、地震保険の損害認定は、全損、半損、一部損の3区分で行われる。
 もう一つ知っておくべきは、一つの地震における総支払い限度額が設けられていることだ。現在想定される最も大きな地震損害は、関東大震災の再来である。東海、東南海、南海の3連動地震もこれを下回る。この関東大震災の再来による予想支払い保険金は6兆2千億円だ。そして、この額が、一つの地震における最大支払額と決められ、これを超える損害になった場合は、一件ごとの保険金の支払額を比例的に削減して、総支払い保険金を6兆2千億円に留めることができる形となっている。
 火災保険と一緒に入ること、保険金額は火災保険の50%までで金額の上限あり、損害認定は3区分のみ、総支払い限度額の適用と色々な制約があるのは、やはり地震リスクが極めて巨大だからである。 (文責個人)

日本損害保険協会 常務理事 栗山泰史